「朝の森」


  湿気が充満する日の森ほど表情が美しい時はない。雨の降る森には静寂感が忍び寄っているし、霧が包む森には淡彩色の美が漂う。 雪が降る日は森の神秘性が最も色濃く現れて、心が洗われるような思いになる。
  長い間、日本各地の森を訪ね歩き、様々な風景に接してきた。なかで思い出に残る風景は数多い。 が、やはり、朝の森は格別印象深いようだ。それは湿気が多いことによるのだろう。たとえ晴天の朝であっても、夜の間に木が発散した水分が森の中に充満していて朝日が差し込むと、 淡い霧が何処からともなく湧き出して幻想的な風景をつくり出すのである。
  自然が生きている証しを、朝の森は見せてくれる。全てのものが大気に包まれて呼吸している。木や草などでつくる森の景色も、水や風や陽光によって表情を変える。 そのたたずまいを自分の感性の赴くままに映しとることによって、写真に生命が宿るのである。

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